ITSMにおけるSLA(サービス・レベル・アグリーメント)

ITサービスデスクにおけるSLAとその役割について詳しく見ていきましょう。

注文した製品が、到着予定日に届かなかったときは不安になりますよね。製品やサービスが遅れて届くことの不満は、何度も経験したくはないものです。このフラストレーションは顧客が別の企業に乗り換えるのに十分な理由になります。

同様にITサービスデスクもエンドユーザーにサービスを提供します。チケットには、インシデントと引き上げられたサービス要求の報告がなされ、それらは妥当な時間内での解決が望まれます。しかし合理的な時間枠とはどのようなものでしょうか?一人ひとりの要求者の期待は、それぞれに異なります。どのようにして、エンドユーザーの期待を効果的に標準化し、管理すればよいのでしょうか?

ここで、サービス・レベル・アグリーメント(SLA)が役立ちます。SLAは依頼者の期待を管理するためにITサービスデスクが採用できる強力なツールです。ここからは「SLAとは何か」「SLAを作成するために必要な要素」「SLAのベストプラクティス(事例)」などを見ていきましょう。

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SLA(サービスレベル契約)とは?

ITIL®4によると、SLA(Service Level Agreement)はサービスプロバイダーと顧客の間で文書化された契約・合意です。SLAがあれば「必要とされるサービス・レベル」「期待されるサービス・レベル」の双方を識別できます。これらの契約は公式・非公式のどちらでも可能です。

ITSMの文脈では、SLAはエンドユーザーが要求を提起したり、インシデントを報告する際の期待値の設定や管理においても役立ちます。ITサービスデスクの場合には、SLAは主にサービスの提供とインシデントの解決にかかる時間を定義するのに使用されます。

●SLAの設計方法

SLAはサービスプロバイダーと顧客の間の契約・合意であるため、提供されるサービスの範囲とレベルを文書化しなければなりません。契約条件を効果的に記録に残しておくため、SLAは一般的に次の要素を組み合わせて構成されます。

  • サービス内容:契約内容、関係者、提供サービスの詳細
  • サービスの品質:サービス基準の詳細
  • サービスの応答性:サービスの提供速度の詳細
  • 合意条件を満たさなかった場合のペナルティ:合意を満たさなかった場合の段階的なペナルティの詳細
  • パフォーマンスの測定:測定方法を含め、測定する必要のある指標のリスト
  • キャンセル条件:契約条件が適用されないケースの詳細

SLAはこれらすべての要素を含む必要はありません。 要素の組み合わせ方は、提供されるサービスの種類によって決まります。

SLAの種類とは?

SLAは提供されるサービスの種類ごとに異なる場合がありますが、大きく3つの種類に分類できます。

・顧客に基づいたSLA:

顧客ベースのSLAは、サービスプロバイダーと顧客または顧客グループに基づくものです。提供されるサービス、サービスのレベル、および関係条件について詳しく説明します。例えば、オンデマンドビデオサービスと加入者の関係では、1つの契約の中に、利用可能なサービスや提供されるサービス期間、約束された稼働時間が網羅されています。契約は顧客が選択したプランに基づいて、それぞれの顧客ごとに変更されます。ここでいうSLAとは個々の顧客に基づいたものです。

・サービスに基づいたSLA:

サービスベースのSLAは、顧客が選択したサービスや製品に基づいている場合に提供される契約です。通常および追加の提供サービスとサービス・レベルを詳述しています。例えば、ITサービスデスクはすべての依頼者に異なるサービスを提供し、各サービス項目には提供されるサービスと時期を詳細に示す固有のSLAがあります。ここでいうSLAは、すべてのエンドユーザーに共通のSLAを持つサービス項目に基づいています。

・マルチレベルのSLA:

マルチレベルのSLAとは、SLAが複数の層またはレベルに分割され、単一のサービスを利用する一連の顧客を指定する契約です。これは企業、顧客、およびサービス・レベルでの契約に対応します。ワークステーションのサービス要求を例にすると、上席の職員から要求される場合は優先度の高いSLAを持ち、臨時の職員から要求される場合は優先度の低いSLAです。

なぜITSMにSLAが必要なのか?

それでは次に、SLAがITサービスデスクにどのような価値をもたらすのかを見てみましょう。従業員のオンボーディングにおけるサービス要求チケットの例を考えてみましょう。

担当者Aは従業員のオンボーディングのためのチケットを発行します。従業員向けのオンボーディング・テンプレートを選択し、リクエストします。チケットの作成時に、担当者Aはこのサービス要求が14日以内に完了することを確認し、同時に彼の期待値として設定されます。担当者Aは午後12時53分にリクエストを出し、SLAタイマーが開始されます。

SLAは次のようなサービス提供条件を定義します。

・レスポンス(応答時間):アサインされた技術担当者がチケットに応答する時間。この場合、アサインされた技術担当者はチケット作成時点から24時間以内にマークさんのチケットに応答しなければなりません。

・解決時間:ワークステーションが納品される時間。この例では、チケットの作成から14日以内に解決・納品する必要があります。

・エスカレーション:レスポンスまたは解決時間に違反した場合に行われるアクションと通知。従業員のオンボーディング・テンプレートに関連付けられているSLAに基づいて、SLA違反が発生した場合に起きるいくつかのエスカレーションと措置が設定されていることがわかります。最初のエスカレーションは、チケットが応答していないことを、チケットの所有者に通知するために設定されます。レスポンスのSLAが不履行となる30分前に、チケット所有者に自動的に通知されるよう設定されています。その他のエスカレーションは、解決に向けたSLAにおける違反となります。第1段階のエスカレーションは、解決期限の1日前にチケット所有者に通知するよう再設定されます。第2段階のエスカレーションは、チケット所有者の報告先にあたる上司にフラグを立て、優先順位の高いユーザー管理チケットを処理できる特別な技術担当者グループに配置し、チケットを最短時間で解決するよう設定します。

そして最後。リクエストの終了後に、SLAが満足のいく設計どおりの動きができたのかを確認するため、担当者Aのフィードバックを収集する満足度調査が行われます。

この例からは、SLAによってインシデントとサービス要求が時間どおりに解決され、ダウンタイムを最小限に抑え、通常業務が可能になることがわかります。また、優先度の高いチケットには直ちに対応し解決できる適切なSLAを割り当て、優先度の低いチケットはそれに適したSLAを割り当てることでチケット対応の優先順位が明らかになります。これにより、ITサービスデスクは効率的に業務を行えます。

SLM(サービス・レベル・マネジメント)とITIL 4

ITIL®4は、解決時間やシステムの可用性などにおいて、それまで個々の働きのみに焦点をあて、その結果、ウォーターメロン効果につながっていた従来のSLAの型を打ち破ります。ウォーターメロン効果とは、SLAの指標が良好な結果を示しているものの、実際には顧客が不満を残していることを指します。許容範囲を逸脱し、顧客のワークフローに影響を与えるSLAは不満につながります。ITIL®4は、顧客満足度をより正確に反映できる指標を特定することに重点を置いています。ITIL®4で導入されたサービス・バリューチェーンは、SLAを新しい目標に合わせるのに役立ちます。以下は、SLAがどのようにしてサービス・バリューチェーンに沿って機能するのかを簡単に表したものです。

  • 計画:SLAはサービスと製品のポートフォリオ、およびサービスのレベルを計画するのに役立ちます。
  • 改善:顧客満足度調査はSLAの有効性を判断するのに役立ち、SLAの改善へと変えていきます。
  • エンゲージメント:顧客からのフィードバックと継続的なサービス改善により、ウォーターメロン効果を排除するため、顧客とのエンゲージメントを保証します。
  • 設計と移行:より優れたSLAの設計・開発ができ、フィードバックに基づいて既存のSLAを改善できます。
  • 取得または構築:SLAはサービス提供基準の土台を提供し、サービス提供パフォーマンスの測定を可能にします。
  • 提供とサポート:SLAはサポートチームにサービス提供の目的を提示し、サービスを時間どおりに提供できるようにします。

サービスレベル管理の役割と責任

次からはサービスレベル管理の責任者と、さまざまな関係者の責任について見ていきましょう。

  • サービスレベルマネージャー(プロセスの所有者):サービスレベルマネージャーは、SLMプロセス全体に対して責任があります。プロセスが効果的であり、適切な利害関係者がプロセスに関わっていることを保証します。各サービス項目におけるサービスレベルについても最終的な発言権を持っています。
  • サービスオーナー:サービスオーナーは、合意されたサービスレベル内でサービスを提供する責任があります。 彼らは通常、内部のサポートグループを率いています。
  • サポートグループ:合意されたサービスレベル内でサービスを提供する専門技術担当者のグループです。
  • 技術担当者:技術担当者は、合意されたサービスレベル内でサービスを提供するサポートエージェントです。
  • エンドユーザー(依頼者):エンドユーザーはサービスの利用者です。

サービスレベル管理改善のためのベストプラクティス

SLAを改善するために使えるいくつかのベストプラクティスを紹介します。

1つのSLAがすべてに合うわけではありません。チケットの種類と優先度に応じて、様々なSLAを作成することが重要です。これによってITサービスデスクは各チケットに適切なリソースを割り当て、依頼者の期待をより適切に管理できます。

レスポンスSLAは、技術担当者がチケットにどれだけすばやく応答するかを示します。チケットに応答すると、それが着々と処理されていることが示されるため、依頼者の満足度を大幅に高めることができます。レスポンスSLAは、依頼者が繁忙期でもすべてのチケットに時間どおりに応答できるようにし、すべてのチケットが時間どおりに応答されるようにエスカレーションを構成します。

解決のためのSLAは、チケットの解決に必要な時間を参照します。

SLA違反は避けられない場合があります。発生した場合は、チケットがすぐに解決されるようなメカニズムを導入する必要があります。SLAエスカレーションは、SLAに違反したチケットや期限が近づいているチケットなど、管理上の問題に自動的にフラグを立てます。SLAエスカレーションはニーズに応じて事前対応型または事後対応型にでき、複数のレベルのエスカレーションを設定し、チケットを確実に解決します。エスカレーションへの対応は、チケットの優先順位を上げ、エスカレーションの各レベルで自動的に特定のサポートグループまたは技術担当者に再割り当てするように設定できます。

ITサービスデスクのパフォーマンスを測定し、SLAが有効かどうかを確認するためにSLAを定期的に監視する必要があります。ITサービスデスクの環境は絶えず変化しており、SLAを評価することでSLAの関連性と効果を維持するために必要な調整を理解しやすくなります。ダッシュボードを使用してSLAを監視し、レポートによって詳細な指標を取得できます。追跡する重要な指標には、解決に向けた最初の呼び出し、欠陥率、平均応答時間、所要時間、平均回復時間などがあります。

最後に、最も重要なことは現実的なSLAを設定することです。行き過ぎた約束と不十分な届け方のSLAは、あらゆるITサービスデスクの悩みの種です。チケットは時間どおりに解決されず、依頼者は満足せず、最終的には通常の業務が中断され、組織はお金を失うことになります。そのためSLAを定義するときは、まずはチケットの要件と利用可能なリソースを評価します。

  • チケットの重要性に応じた個別のSLAの作成
  • レスポンスと解決のためのSLA設定
  • SLAエスカレーションの設定
  • SLAパフォーマンスの定期的な監視
  • 現実的なSLAの作成
結論:

SLAを適切に使用すると、チケットの優先順位付けが楽になります。そしてチケットを時間どおりに解決できるよう必要なリソースが慎重に割り当てられることで、ITサービスデスクの効率も高められます。またSLAはサービスの提供基準を定義し、依頼者の期待をより適切に管理しやすくなります。SLAを設定することで、サービス提供を次の段階へと引き上げ、依頼者がサービスの遅延に不満を感じないようにします。

ServiceDesk Plusでは、これらのベストプラクティスをスクリプトなしで実装可能です。

※ ITIL®(IT Infrastructure Library)はAXELOS Limitedの登録商標です。

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