このガイドは、ITSM(ITサービスマネジメント)のプロセスとワークフロー、長所、成功事例(ベストプラクティス)、およびその実装方法など、ITSMについての幅広い理解を深めるためのものです。ITSMの基本概念を全面的にまとめた概要として、皆様に提供することを目的としております。ITをビジネスのニーズに合わせて調整し、サービスを効率的に提供する方法を学びましょう。
このITサービスマネジメントガイドでは、次の項目について説明します。
ITサービスマネジメント(ITSM)とは?

ITサービスマネジメント(ITSM)は組織がエンドユーザーに提供するITサービスを設計、提供、管理、および改善していくプロセスのことです。ITSMは、ITのプロセスとサービスをビジネスの目的に合わせて調整し、組織の成長を支援することに重点を置いています。
ITSMとITILの違いとは?

ITILとは、組織のIT運用とサービス管理における成功事例(ベストプラクティス)と長所を体系化したフレームワーク(枠組み)です。1980年代半ばに英国政府のCCTA(Central Computer and Telecommunications Agency)によって始動しました。ITSMのプロセスは、ITILのフレームワークに基づいて構成されると、より優れたITサービスとビジネス向上の道を切り開いていけます。ITILは効果的なITサービス管理のための一連のガイドラインと言えます。
サービスデスクの86%がITILのフレームワークを使用しています。 ただし、ここ数年はISO / IEC 20000(29%)およびDevOps(11%)の使用が増加しています。
ITサービスマネジメントがもたらす利益・メリット

ビジネスの規模に関係なく、どの組織も何らかの形でITサービスマネジメントに関わっています。ITSMは、インシデント、サービス要求、問題、変更など効率的な方法で管理されたITサービスの様々な側面を加えながら、IT資産を管理します。
ITILで示されているように、組織内のITチームは、ITSMで様々なワークフローと成功事例を採用することができます。効果的なITSMのプロセスは、IT組織の全体的な働きにプラスの影響を与えることができます。
ITSMの10のメリット
- IT運用におけるコスト削減
- IT投資の費用対効果の改善
- 最小限のサービス停止
- 明確な定義付けや再現性のある、管理しやすいITプロセスの確立
- ITの課題を効率的に分析し、繰り返し発生するインシデントを削減
- ITヘルプデスクの効率改善
- 役割と責任の明確化
- サービスのレベルと有用性(できること)の区別
- IT変更時の実装におけるリスクを軽減
- ITのプロセスとサービスの透明性の向上
ITSMツールでどう運用が
変わるのか試す
ITSMのプロセス
ITSMのプロセスには通常、5つの段階があり、すべてITILのフレームワークに基づいています。


サービス・ストラテジ(サービス戦略)
この段階では、組織のITSMプロセスの構築基盤またはフレームワークを形成します。組織が提供するサービスの定義、プロセスの戦略的計画、そしてプロセスを動かし続けるために必要な資産を理解し開発することも含まれます。すべての組織のサービス戦略において、次の側面が含まれます。
サービス戦略管理
組織のマーケット、製品、競合相手を評価し、ITサービスの戦略を策定します。
サービス・ポートフォリオ管理
定義された運用の範囲内で、顧客対応のための適切なITサービスを確保するため、サービスカタログを管理。
財務管理
組織の予算、口座、および請求書の管理。
需要管理
定義されたITサービスの需要を理解し予測して、顧客の要求とニーズを満たすための能力を組織が確保します。
事業関係管理(BRM)
顧客の要求に応えた適切なサービスの開発を保証し、ユーザーのニーズをつきとめ、顧客との良好な関係を維持します。

サービス・デザイン(サービスの設計)
この段階の主な目的は、組織がビジネス需要を満たすために提供するITサービスを計画し、デザイン(設計)することです。新しいサービスの作成と設計、ならびに現在のサービスへの評価と関連する改善点も含みます。ITサービスのデザインにはいくつかの要素があります。
デザインコーディネーション
新しく設計または修正されたサービス、情報システム、テクノロジー、指標の一貫性と効果を確保するためのデザイン管理。
サービスカタログ管理
組織のIT関連サービスとそのステータス、他のサービスとの相互の関係性がわかるすべての情報を提供するサービスカタログを作成・維持。
リスク管理
ITサービスのプロセスによって引き起こされる潜在的なリスクを突き止め、それらの影響と最も妥当な回避策を記録します。
サービスレベル管理
顧客との話し合いをもとにサービスレベルの合意について明確にし、顧客に基づいてデザインされたサービスを確保します。
キャパシティ管理
提供されるITサービスのキャパシティを分析し、サービスレベルの目標を十分に満たすことができることを確実にします。
可用性管理
ITサービスで利用できるすべての局面を管理します。
ITサービス継続性管理
少なくとも最小限の合意されたサービスレベルが満たされていることを確認し、リスクを管理して、ビジネスの継続性が損なわれないようにします。
情報セキュリティ管理
データのセキュリティを維持し、組織の機密保持と統一性を保護します。
コンプライアンス
事業と法に則った方針に準拠したITサービスを確立させます。
アーキテクチャーマネジメント
マーケットで利用可能な新しいテクノロジーに基づいて、組織の技術的な展望の将来像を計画し、発展させていきます。
サプライヤー管理
サプライヤーが契約上の義務を確実に果たすように、サプライヤーとの契約を管理します。

サービスの移行
ITサービスのデザインとそのプロセスが完成したら、それらを立ち上げ、プロセスが確実に流れるようテストすることが重要です。ITチームは、特に既存のITサービスのプロセスがアップグレードや再設計された際に、可能な限り、設計によってサービスが中断されないようにする必要があります。これには 変更管理、評価、リスク管理が必要です。リスクなしの移行は存在しません。そして移行中は先回りした行動が重要です。
変更管理と評価
運用、戦略、または戦術的な変更を含む、すべてのIT変更のライフサイクルを管理します。
プロジェクト管理
重要なリリース活動の計画と管理を行います。
ナレッジ管理
組織内で共有されたIT知識の基盤を維持します。
サービス資産および構成管理
提供されるITサービスに必要なIT資産とその構成アイテム(CIs)の維持と管理。
リリースおよび展開管理
既存サービスの中断を最小限に抑えるために、さまざまなリリースを計画、スケジューリング、および制御します。

サービスの運用
このフェーズでは、実際の環境で、試行錯誤された新しい設計または変更された設計を実装します。この段階ではプロセスはすでにテストされ問題は修正されていますが、とりわけ顧客がサービスの使用を開始すると、新しいプロセスには問題が発生する可能性があります。したがってITチームはプロセスとワークフローを綿密に監視し、サービス提供の継続性を確保するため、積極的に先回りして取り組む必要があります。ITILのフレームワークは、サービス運用段階の主なプロセスの一部として、以下を定義しています。
インシデント管理と要求実現
すべてのITインシデントが早期に解決され、サービスレベルの目標内で要求に対応できるようにします。
問題管理
すべてのIT問題を管理し、問題の原因となったITインシデントの影響を最小限に抑え、解決策または回避策を考え出します。
テクニカルマネジメント
最適な技術的専門知識とサポートでITインフラを管理します。

継続的なサービス改善(CSI)
ITプロセスを正常に実装することは、どの組織においても最終的な段階とは言えません。発生する問題、顧客のニーズと要求、およびユーザーのフィードバックに基づいて、改善と新しい開発の余地が常にあります。重要業績評価指標(KPI)と測定基準は、改善と変更が必要な領域を突き止めるうえで、重要な役割を果たします。以下にCSIに関するいくつかの側面を紹介します。
ITサービスのレビュー
改善が必要そうな領域を特定して、提供されているサービスとITインフラを見直します。
プロセス評価
プロセスを絶えず監視し、基準値が維持されていることを確認するために評価します。
CSIイニシアチブ管理
CSIのイニシアチブを明確化ならびに監視して、CSI活動が計画どおりに実行されていることを確認し、途中で発生する可能性のある問題を修正します。

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本記事は、原文(英語)を抄訳したものです。
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