現場に根づくインシデント管理プロセスの設計と、その実装方法とは

ServiceDesk Plusによるインシデント管理実装ガイド

インシデント管理ツールを導入しただけでは、インシデント対応の仕組みがすぐに機能するわけではありません。実効性のあるインシデント管理を行うには、プロセスを設計するだけでなく、現場に定着させることが重要です。

インシデントのカテゴリと優先度の定義、記録・トリアージの自動化、ヘルプデスクチームへのベストプラクティスの浸透といった具体的な実装ステップを解説します。さらに、ServiceDesk Plusを活用することで、これらのプロセスをより効率的・高度に運用する方法についてもご紹介します。

インシデント管理プロセスの実装において重要な3つの視点

インシデント管理を機能させるには、ツール導入の先にある「運用設計」と「現場定着」がカギになります。確実に機能する運用体制を作り上げるには、何を意識すべきでしょうか。まずは、インシデント管理の実装を成功させるための3つの要点からご紹介します。

視点1.ITIL®やISO 20000など標準規格に準拠していること

多くの企業や公共機関は、ITIL®(Information Technology Infrastructure Library)やISO 20000といった国際的な標準に沿ってサービスマネジメントを構築しています。インシデント管理プロセスも、これらのフレームワークに即した形で実装すると、他のITSMプロセス(問題管理、変更管理など)との連携が取りやすくなり、横断的な汎用性と長期的な運用の安定性が得られます。

>> ITILとは?知っておくべき5つのポイント

視点2.実践のしやすさと拡張性の両立

インシデント管理は、企業の規模やIT環境の成熟度に応じて柔軟に変化・対応させることも重要です。まずはインシデントのカテゴリや優先度の定義といった基礎部分を固め、運用を安定させた上で、自動化やレポート分析機能の強化など、より高度な管理へと段階的に拡張していくのが理想です。ServiceDesk Plusのような柔軟なITSMツールなら、こうした段階的な導入をスムーズに行えます。

視点3.再現性が高く、効果検証がしやすいこと

効果的なインシデント管理プロセスは、PDCAサイクルを継続的に回しやすい構造になっています。たとえば、SLAの遵守率やインシデントの再発率、平均対応時間などの指標をもとに、運用の成果を可視化し、改善につなげていくことができます。これにより、単なる「対処」ではなく、予防と最適化を含んだインシデント管理体制を確立できます。

インシデント管理プロセスの実装ステップ

ここからは、「インシデント管理プロセスを構築・定着させるためのステップ・バイ・ステップガイド」として、具体的な実装手順を、順を追ってご紹介します。それぞれのステップにおいて、ServiceDesk Plusを活用することでどのような効果が得られるのかも、あわせて解説していきます。

【STEP1】 インシデント管理の目的とスコープ(範囲)を明確にする

最初のステップは、「何のためにインシデント管理を行い、どの範囲までを対象とするのか」を明確にすることです。たとえば、

  • 対象とするIT環境は、オンプレミスのみか? クラウドやSaaSも含めるか?
  • KPIやSLAは何を指標とするか?(例:平均対応時間、SLA遵守率、ユーザー満足度)

ServiceDesk Plusでは、SLAや応答時間、解決時間を細かく定義でき、対象範囲ごとのSLAポリシーも柔軟に設定できます。

【STEP2】 インシデントのカテゴリと優先度の定義

次に、インシデントを分類し、対応優先度を明確化します。これにより、属人化の排除と効率的な対応が可能になります。

  • カテゴリ例:ハードウェア/ネットワーク/アプリケーション/アカウント管理など
  • 優先度の決定基準:緊急度(即時対応が必要か) × 影響度(業務範囲の広さ)を軸に、P1〜P4などの優先度を設定
優先度意味対応の目安
P1(最優先) 重大な障害。全社的に影響があり、業務継続が困難。全社ネットワークダウン、メールシステム停止即時対応・24時間体制で解決へ
P2部分的な障害。複数部署や重要システムに影響。経理システムの不具合、サーバーの一部停止当日中に対応開始
P3限定的な影響。業務に支障はあるが致命的ではない。1人のユーザーのPCトラブル、印刷できない数営業日以内に対応
P4(最下位)影響が小さく、緊急性の低い依頼。ソフトウェアのバージョン確認依頼、設定変更の相談優先度に応じて順次対応

ServiceDesk Plusでは、インシデントの影響度や緊急度に基づいた自動優先度設定が可能で、エスカレーションルールとの連携もスムーズです。

>> インシデントの分類も対応の振り分けも自動化できるITSMツール

【STEP3】 インシデント受付・記録の標準化と自動化

インシデントがどこから届いても、一貫した記録ルールに基づいて処理されることが重要です。

  • メール、チャット、電話、Webフォーム、ユーザーポータルなどマルチチャネル対応
  • ServiceDesk Plusでは、自動チケット生成や、Webhook・スクリプトを活用したインシデント受付ルールの自動化が可能です。

これにより、対応漏れの防止と初動スピードの向上が期待できます。

>> Webhookを利用した外部ツールとのコラボレーション

【STEP4】 トリアージとエスカレーションルールの設計

発生したインシデントに対し、誰が、いつまでに、どのように対応するかを自動的に判断・振り分ける仕組みを整えます。

  • トリアージルールの設計(カテゴリ × 優先度 × 影響範囲)
  • エスカレーションルールの自動化(SLA違反前のリマインダー、管理者通知など)

ServiceDesk Plusでは、条件ベースの自動割り当て機能により、トリアージ作業を効率化し、人的ミスを最小限に抑えられます。

【STEP5】 チームへのトレーニングと運用ルールの定着

ツールやルールを導入するだけでなく、ヘルプデスク運用担当者が正しく使えるようにすることも重要です。

  • インシデント対応フローやポリシーの周知
  • 初動対応マニュアルやチェックリストの整備
  • ロールプレイや模擬演習による実践的トレーニング

ServiceDesk Plusでは、ナレッジベース機能を使ってFAQや対応マニュアルを共有することで、属人化の回避とスキル平準化を支援できます。

>> ナレッジ管理システムを1時間で構築できるITSMツール

【STEP6】 レポートとダッシュボードによる可視化・改善

インシデント管理プロセスが確実に機能しているかどうかを、データに基づいて評価することは不可欠です。

  • インシデントの件数、原因、対応時間などを継続的にモニタリング
  • トレンド分析(インシデント傾向の可視化)や再発防止策の立案

ServiceDesk Plusでは、カスタムダッシュボードや自動レポート作成機能を使って、KPIをリアルタイムに把握できます。ダッシュボードはウィジェットで構成されており、ドラッグ&ドロップで自由にレイアウト可能です。

>> レイアウト自在なダッシュボード機能でサービスデスクの状況を瞬時に把握

また、ServiceDesk Plusには、標準レポートとカスタムレポートの作成機能があり、50種類以上の標準レポートや、組織のニーズに合わせたカスタムレポートを作成できます。

>> サービスデスク業務を支援できる様々なレポート機能

【STEP7】 継続的改善と他プロセスとの連携

インシデント管理は、単体で完結するものではありません。他のITIL®プロセスとの連携によって、より強固なITSMの基盤が築けます。

  • 問題管理と連携して根本原因を分析
  • 変更管理・リリース管理で再発防止策を実施
  • ナレッジ管理で対応ノウハウを蓄積・再利用

ServiceDesk Plusは、これらのモジュールをシームレスに統合でき、ITIL準拠の継続的改善(CSI)を後押しします。

インシデント管理は、単なるツール導入ではなく、目的に合ったプロセスを設計し、現場に定着させていく取り組みです。本ページでご紹介したステップをひとつずつ実装することで、インシデント対応の質とスピードは確実に向上します。ServiceDesk Plusなら、これらのインシデント管理プロセスを、現場で定着する仕組みとして展開することが可能です。