ITサービスデスクの業務とは?
ITサービスデスクは、ヘルプデスクやサポートセンター、テクニカルサポートと呼ばれることもあります。様々な業務を担当しており、迅速な問題解決、ユーザー満足度の向上、組織プロセスの効率化、生産性に関わる知見の提供など、従来のテクニカルサポートの範疇にとどまらない点が特長です。
ITサービスマネジメント(ITSM)の実現という目的に向けて、ITサービスデスクでは主に以下のような業務を行います。
- インシデント管理: サービスの中断や運用のトラブルを最小限に抑えるために、技術的な問題を特定し、解決していく。
- リクエスト管理: ソフトウェアのインストール要求、特権リソースへのアクセス許可など、ユーザーからのあらゆるニーズと要求を管理する。
- 問題管理:繰り返し発生するインシデントの根本原因を分析し、回避策または解決策を実装することで将来のインシデントを防止する。
- 変更管理: インフラの安定性を確保し、成功率を最大化するため、IT環境における変更を体系化する。
- IT資産管理:ハードウェアとソフトウェアの資産の追跡や、ライフサイクルの管理、コストの最適化、ライセンス使用とベンダー契約のコンプライアンスを確保する。
- ナレッジ管理: よくある質問やトラブルシューティングガイド、および問題の解決策のデータベースを作成し維持する。このデータベースを技術者やエンドユーザーの問題解決の最初の手段として利用できるようにする。
よくITサービスデスクとITヘルプデスクが同じ意味で使われることがありますが、その目的・役割は異なります。
ITヘルプデスクはエンドユーザーに対して基本的なITサポートを提供する業務です。基本的には事後対応となり、問題やリクエストが発生した際の解決に重点をおいています。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークに関する問題など、エンドユーザーが直面しやすい技術的な問題の解決が中心になります。
一方で、ITサービスデスクの場合はサポートの事前対策を含め、ITサービスをビジネス目標に合わせて調整させる役割を担っています。ユーザー満足度を重視すると同時に、インフラと運用も重視します。また、 インシデント管理 やIT資産管理などITサービスの管理プロセスを任されるのもITサービスデスクです。つまりITヘルプデスクは、ITサービスデスクの構成要素の1つと捉えることができます。
ITサービスマネジメント(ITSM) とは、エンドユーザーに提供されるITサービスを設計・提供・管理・改善するために、組織が行う一連のプラクティスやプロセスを意味します。ITサービスデスクとITヘルプデスクの両方の役割を網羅し、ITサービスをビジネス目標に合わせて調整し、エンドユーザーの満足度を高め、そしてITサービス全般の質を高めていくことがITSMの役割です。
ITサービスデスクは、組織の構造・ユーザーの居場所・コミュニケーションの形式・サポート要求に必要な専門知識のレベルなど、様々な要因によって種類が異なります。
ローカル型サービスデスク | 一元管理型サービスデスク | バーチャル型サービスデスク | |
---|---|---|---|
サービスデスクの場所 | 組織内の様々な場所に物理的に存在。 | すべてのITサポート機能を1つの場所で統合・管理。 | 物理的な場所を持たず、リモートで稼働。 |
サービス提供の形式 | 物理的に近いユーザーにサービスを提供。 | ユーザーの所在地に関係なく、すべてのサポート要求に対応。 | 自宅など様々な場所から、メールやチャット、リモートデスクトップなどでユーザーを支援。 |
メリット・特長 | 物理的に距離が近く、ユーザーを迅速に支援できるため、オンサイトでの緊急の技術的問題には対処しやすい。 | 一貫したプロセス、リソース、専門知識が確保されやすい。運用が合理化され効率的で、均一なユーザーエクスペリエンスを提供しやすい。 | 会社・出張先・自宅など様々な場所に分散したユーザーからの問い合わせに柔軟に対応できる。 |
ITサービスデスクはIT運用の効率化においても非常に重要な存在です。まず従業員の技術的な問題を解決し、シームレスな業務遂行を支援します。一貫した高品質のサービスを顧客に提供するという目的においても、生産性と運用の継続性に大きな影響を与える立場です。
また、ITサービスデスクはシステムの稼働・維持に必要な日常業務や運用管理にも役立ちます。自動化によって日常的なIT業務の大半を管理でき、その結果、技術担当者は本来の専門的な業務に時間を割くことができます。従業員の能力・コスト・時間といった貴重なリソースが解放されることで、ビジネス目標を達成するための戦略的デジタルイニシアティブに力を注ぐことが可能になります。
年々、ITポリシーへの遵守に向けられる目が厳しくなっていますが、インシデント、変更、リクエストなどを文書化し、説明責任とコンプライアンスを促進することで、ITポリシーの遵守を支援します。
つまり、堅牢なITサービスデスクを持つ組織・企業は、ITシステムの安全性が維持され、業界標準に準拠しているという信頼を得ることができます。
ITサービスデスクがもたらすメリット
サービス提供の効率化
技術担当者・エンドユーザーなどすべての関係者へのサービス提供を効率化します。例えば3層のサービスデスクの場合、まず0層にセルフサービスポータルを配置。第1層・第2層・第3層に技術担当者を配置し、技術的な問題を難易度に応じて適切な層に割り当てます。これによって問題がタイムリーに解決され、エンドユーザーは業務に集中しやすくなります。
サービス中断の最小化
ITサービスデスクの迅速な解決プロセスによって、インシデントが体系的に処理され、サービス中断を最小限に抑えます。根本的な問題の原因分析も可能で、長期的な解決策を実装しやすくなります。インシデントの分析に基づいた継続的な改善で、将来起こりうる障害への事前対応も可能にし、潜在的なインシデントがサービス提供に影響を及ぼす前に検出・防止できます。
働きやすい環境
迅速でスムーズなサービス提供により、生産性が向上し組織の人材確保にも貢献します。ワークライフバランスが向上し、従業員が組織の価値を肯定的に感じるようになります。そうなると、企業は競争力を持ち、すでに働いている人材や将来の入社希望者にとっても、魅力的な企業にすることが可能です。
データに基づいた洞察
ITサービスデスクのデータを分析することで、IT予算の割り当て・リソース計画・技術投資など経営の意思決定に役立つ洞察・知見を得やすくなります。
コスト削減
サービス中断の長期化を防ぐことで、潜在的な収益損失と運用コストの削減にも役立ちます。SLA(サービスレベル契約)に基づき、継続的な改善によって費用対効果の高い運用を確保します。
コンプライアンス
標準化されたプロセス、ポリシー、規制を施行し、ITコンプライアンス遵守とリスク軽減における番人としての役割を果たします。
効率的なITサービスデスク運用のためのベストプラクティスとヒントをご紹介します。
- ITSMフレームワーク: ITIL®、COBIT、MOF、eTOM、TOGA など、一般的なベストプラクティスのフレームワークをいずれか採用しプロセスを標準化することで、ITサービスマネジメント(ITSM)へのアプローチがしやすくなります。
- マルチチャネルによるサポート: 電話、メール、チャット、セルフサービスポータルなどさまざまな連絡用チャネルを用意し、ユーザーは利用しやすいチャネルを選択して問題を報告できるようにします。
- ナレッジベース(知識データベース): よくある問い合わせや問題への解決策とベストプラクティスを文書化し、包括的な ナレッジベース を開発・維持します。ユーザーが自分で解決策を見つけられるようにし、サービスリクエストの必要性を減らします。技術担当者もナレッジベースにアクセスできるようにします。
- SLA管理: サービス・レベル・アグリーメント(SLA) を遵守し、応答時間と解決時間の期待値を定義し、顧客の期待にそえるサービス品質を維持します。
- 自動化: スピーディーな問題解決と生産性向上には自動化が欠かせません。①すべてのチケットに対するSLAの自動設定 ②作業負荷と専門知識に基づいた技術者の割り当て ③リスクを最小限に抑えるための変更およびリリース管理のための自動ワークフローの設計 ④承認プロセスの自動化 ⑤時間遅延アクションの実行 ⑥自動タスクの実行 ⑦リアルタイムの通知とアラートの送信など、幅広いタスクを自動化できます。サービスデスク担当者は反復的な業務から解放されることで、応答時間の短縮など業務効率が向上します。
- AIチャットボット: AIチャットボットとバーチャルアシスタントを最初の窓口として統合し、ITサービスデスクの応答時間を短縮させます。AIチャットボットとバーチャルアシスタントによって、よくある問い合わせの管理や問題解決の案内を提供することができ、サービスデスク担当者はより複雑なタスクに集中できるようになります。
- リモート対応: サービスデスクがリモートで問題を診断・解決できるようにし、物理的な立ち会いを不要にします。リモートワークやハイブリッドワークにおいては必須の機能とも言え、ITSMプラットフォームにリモート対応のツールが組み込まれていると便利です。
- 継続的な改善: パフォーマンス指標を定期的に分析し、強化すべき点を特定します。ボトルネック、繰り返し発生する問題、強化すべき領域を特定することで、需要の変化に合わせてITサービスデスクを進化させることができます。
※ ITIL® (IT Infrastructure Library®) はAXELOS Limitedの登録商標です
ITサービスデスクは、技術の進歩により変化を遂げているところです。将来は以下のような傾向がより顕著になるでしょう。
高度なAIと認知技術
高度な人工知能(AI)とコグニティブ・テクノロジー(認知技術)の統合が進むと予想されます。ITサービスデスクがITOps(IT運用)システムに統合されることで、ネットワーク管理やアプリケーションの稼働状況など、IT運用管理システムで検出される様々な事象をAIで認識できるようになります。このようなAIモデルは、従来なら見落とされていた事象を過去データと関連付け、インシデント発生時に技術担当者に解決のヒントを提供できるようになります。例えば、アプリケーションサーバーのメモリが過負荷になり、ユーザーがERPへの接続に問題を抱えている場合、AIモデルがこれらの事象を関連付け、解決策を提示します。
予測分析の利用拡大
予測分析がさらに普及し、ユーザーがITサービスデスクに問い合わせを行う前に、あらかじめ問題が予測され対処できるようになるかもしれません。時期や季節によるリクエストの傾向を基にチケットが自動発行される予測保守や、サービスデスク全体の運用効率を向上させるために「今後、どのようなチケットが流入してくるか」をあらかじめITチームに警告することも可能になります。
拡張現実(AR)と仮想現実(VR)によるユーザーエクスペリエンスの向上
ARとVR技術により、サービスの提供方法が変わるかもしれません。これらの技術はリモート支援・トレーニング・トラブル解決に利用でき、臨場感のある効果的なユーザーエクスペリエンスを生み出すことが可能です。フィールドサービス技術者にも有用で、新入社員でもAR技術の視覚的な支援によって、迅速にスキルアップできます。
自然言語処理(NLP)の強化
自然言語処理 (NLP) の進歩は、スマートな応答・感情分析・ナレッジの自動作成・チケットの要約・チャット機能の向上などを促進します。NLP技術によって多言語サポート・過去のやり取りからの学習・音声認識が統合され、ユーザーエクスペリエンスも高めます。文脈理解とナレッジベースが強化されることでサービスデスク業務を最適化できます。
サイバーセキュリティ対策の急速な進化
サイバー攻撃の脅威が高まるにつれ、サービスデスクにおけるサイバーセキュリティ対策も進化していきます。深刻な影響を受ける前にエンドポイントを隔離する高度な脅威検出システムの統合、セキュリティインシデント対応における自動化の強化、特権アクセス管理のきめ細かな制御、ユーザーの意識向上の重視などが考えられます。
ITサービスデスクで使用するソフトウェアは数多く出回っており、自社に最適なツールを見つけるのは簡単ではありません。組織の規模・ニーズ・目標・予算・欲しい機能など条件とツールが確実に合致するよう、様々な要素から慎重に検討していきましょう。
- 要件定義: 組織の具体的な要件を特定します。どのような種類のリクエストを処理したいのか?自社のサービスデスクに不可欠な機能は何か?チケット管理、自動化、レポート機能、セルフサービスオプション、統合・連携機能などの要素を検討します。
- 拡張性: 組織の事業計画を考慮し、ユーザー数の増加・サービス提供の拡大に対応できる拡張性のあるソフトウェアを選択します。
- 使いやすさ: 技術担当者にもエンドユーザーにも、共に使いやすいソフトウェアを選択します。わかりやすいソフトウェアを選ぶことでトレーニング時間が短縮され、導入しやすくなります。
- カスタマイズと柔軟性:ローコード/ノーコード機能に優れ、カスタムモジュールを作成するための拡張性とプラットフォーム機能を備えているかどうかを確認します。
- 統合・連携機能: CRMやプラットフォーム、監視ツールなど既存のツールやシステムとスムーズに統合・連携できるかを確認します。
- モバイル対応・マルチチャネル対応: 出張先や営業先からもアクセスできるよう、モバイルアプリなど応答性の高いインターフェースがあるかどうかを確認します。メール・電話・チャット・セルフサービスポータルなど、様々なチャネルで対応できるようにします。
- 自動化とセルフサービス: 定型業務を自動化し、ユーザーにセルフサービスのオプションを提供できるソフトウェアにします。
- レポートと分析機能:パフォーマンス指標を追跡し、リクエストやインシデントなどの傾向を特定し、データに基づいた改善ができるよう充実したレポート機能と分析機能が必要です。
- セキュリティとコンプライアンス: データ暗号化やアクセス許可などセキュリティのベストプラクティスに準拠しているソフトウェアかを確認します。ソリューションは関連する業界標準や規制に準拠する必要があります。
- 導入と価格における注意点: オンプレミスまたはクラウドを選択できるソフトウェアにします。最終候補に残ったソフトウェアを、初期費用とランニングコストの両方について比較します。ソフトウェアの長期的な価値と投資収益率 (ROI) を考慮することが重要です。
- カスタマーサポートとユーザーフィードバック: トレーニング、対応力などベンダーのカスタマーサポートのオプションを検討します。導入済みの同業他社のレビューや導入事例から、検討中のソフトウェアがどの程度自社のニーズを満たすかのヒントが得られます。
- 試用版の利用: 無料のトライアルコースを試用して、ソフトウェアの機能と適合性をテストします。自社の要件にどの程度適合しているのかを理解しやすくなります。
- 企業の信頼性: ソフトウェアのメーカー/ベンダーの評判、安定性、業界における歴史も確認します。
- 将来的な開発予定: ソフトウェアの将来的な開発計画について問い合わせ、自社の長期的なニーズに適合しているかを確認します。定期的にアップデートされ、業界のトレンドに沿ったソフトウェアなら、長期的な導入効果を望めます。
ServiceDesk Plus ができること
ITSMワークフローの
ベストプラクティス
IT管理アプリとの
スムーズな統合・連携
スマートな自動化
充実したレポート機能
ノーコードでカスタマイズ
クラウド/オンプレミス版
選択可能
エンタープライズサービス
マネジメント
AI活用の仮想アシスタント
死角のないIT運用
ServiceDesk Plus は、業界のベストプラクティスに基づいて構築されたITSMプラットフォームで、組織のITSM業務を合理化できるよう設計されています。ServiceDesk Plusのプラットフォームは、ITサービスデスク機能とIT資産管理およびCMDB(構成管理データベース)を組み合わせた包括的な機能を提供します。 エンタープライズサービス管理 機能もあわせ持ち、人事、施設、財務など非IT部門のサービス提供も管理できます。
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複雑なプロセスを自動化するために、ServiceDesk Plusは直感的なビジュアルのワークフロー構築機能を装備しています。このワークフロー機能は、変更とリリースの設計・実装を簡素化でき、チケットとIT資産のライフサイクルを標準化し、他の様々なシステムとも接続・連携することで、人の手を介さない高い操作性を実現できます。
拡張可能なプラットフォームでもあり、ノーコード/ローコード機能を利用して、自社のニーズを満たせるServiceDesk Plusにカスタマイズできます。
ServiceDesk PlusのAIを活用した仮想アシスタント「Zia」を自社サービスに組み込むことも可能です。 Ziaは予測行動と会話機能で技術者とエンドユーザーの両方を支援でき、サービス管理を合理化し、生産性を向上させ、現在の進化するビジネスに適応するための強力なツールとなるでしょう。
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本記事は、 原文(英語) を抄訳したものです。